【骨盤の縦開閉】
では、縦に開くとはどのような状態でしょうか。骨盤全体をお椀だとイメージして下さい。お椀を伏せて斜めに傾けた状態を正常な骨盤の位置だとします。
そこからお椀を上に向けていくと、これが縦に開いた状態です。専門的には腸骨が後方に回転しているという意味で、「後方腸骨」と言います。
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※分かりやすいように、動きを誇張して撮影しています。 |
先ほどの正常な位置から今度はさらに伏せていくと、これが縦に閉じた状態。「前方腸骨」です。
ヒップアップしたお尻を思い浮かべて下さい。キュッと締まったお尻です。このときお尻の中での骨盤の動きは前方腸骨、もしくは縦に閉じた状態。
逆にお尻が落ちた姿勢(ヒップダウン)もイメージしてみて下さい。こちらが後方腸骨で、縦に開いた状態です。
ご自身でヒップアップとヒップダウンの動きを交互にしてみるとよく分かりますが、腹筋と背筋、ももの表と裏の筋肉をシーソーのように使って骨盤を動かしているはずです。(正確には、深層筋と呼ばれる腸腰筋を使っていくことが大切で、使えている方もいらっしゃると思いますが、話が複雑になりますので、また次回に。)
このように、骨盤は体の前面か後面、強い側の筋肉に引っ張られて、骨盤全体として縦に閉じたり開いたりしています。
【ヒップアップ・ダウンの中での骨盤の動き】
分かりやすくするためにお椀を例えにしました。お椀と骨盤の違うところは、仙腸関節があるかないか。
取り巻く筋肉によって全体的に縦に開いたり閉じたりする骨盤の中では、仙腸関節を軸にした別の動きも起こっているのです。詳しく見ていきましょう。
ヒップアップでは骨盤の両側の腸骨が縦に閉じ(前方回転)、仙骨は逆に縦に開く方向に動きます(後方回転)。
ヒップダウンでは腸骨が縦に開き、仙骨はその逆に動きます。
仙腸関節は数ミリ程度のわずかな動きですから、腸骨と仙骨が互い違いに動いたからといって、せっかく全体としてヒップアップしたお尻のかたちが、何だか変になるということはありません。
ただし、後で詳しくお話ししますが、自律神経が働きすぎてしまうタイプの方は仙骨に反応が出やすく、仙骨と尾骨が後ろに出過ぎて、少しとがり気味のお尻になります。
また、ご高齢の方、運動不足の方の中には、仙腸関節周囲の靱帯が硬くなり、お椀の例え通りに、骨盤全体が一体化して動くこともあります。
日常生活で左足重心が強かったりと、偏った姿勢になる人の場合は、左の仙腸関節だけが硬くなることが多いです。
女性では、婦人科系の臓器(子宮・卵巣など)に負担がかかっていると、腰椎や骨盤付近から伸びる該当神経の影響から、左重心になりやすい傾向があります。
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