【縦横の動きの連動】
ここまで骨盤の横と縦の開閉を別々に見てきました。実際には両方の動きは連動して起こります。
骨格の構造から見た仙骨と腸骨の関係では、仙骨が前方回転すると左右の腸骨は近づき(=左右の坐骨は離れる)、仙骨が後方回転すると左右の坐骨が近づく(=左右の腸骨は離れる)とされています。
【左右の腸骨が近づき、坐骨が離れた状態】 |
【左右の腸骨が離れ、坐骨が近づいた状態】 |
|
|
※分かりやすいように模型を分解し、動きを誇張して撮影しています。 |
【自律神経では逆に】
骨格の構造からは、この連動がいちばん自然なのです。しかし、構造に反して逆の動きをさせる要素が別にあります。
それは、自律神経のしくみから見た場合。ここからはカイロプラクティックでも、関節生理学でも言われていない、均整法独特の味方です。
仙骨の前側には自律神経が密集しており、仙骨の上半分は副交感神経、下半分は交感神経の割合が高くなっています。
よって、例えば下半分の交感神経が働きすぎて緊張した場合、周囲の筋肉が凝って、仙骨の下半分を後ろに引っ張ります。
交感神経と副交感神経は基本的にシーソーのような関係にありますので、上半分の筋肉は逆に弛み、仙骨の上半分を前にへこみます。先ほどの仙骨が前方回転した状態と、見かけ上同じになります。
しかし、腸骨と坐骨はどうでしょう?骨格の構造から考えると、仙骨がうなづくと腸骨は近づく、でしたが、自律神経のしくみから見ると、坐骨は仙骨下半分周りの筋肉の凝りに引っ張られて近づき、腸骨は弛んだ筋肉によって離れます。逆になるのです。
【全体的な開閉(弛みと締まり)】
交感神経緊張の場合、主にお尻の下半分の筋肉が凝って縮むものの、お尻の筋肉全体としても縮む傾向にあります。
逆に副交感神経が働きすぎる人の場合は、仙骨の上半分周囲の筋肉には凝りがでますが、お尻の筋肉全体としては弛む傾向にあり、下(しも)ぶくれ型の、でーんとしたお尻になりがちです。
お尻全体としてキュッと締まっているか、だらんと弛んでいるか。これが最初に紹介した骨盤の3つの開閉のうちの3つめにあたる、全体的な開閉なのです。
よって施術では、その人の骨盤の変位が、骨格の構造を偏って使い過ぎたためなのか、自律神経の疲労からなのかを見極めていかなければなりません。
|