骨盤は、両側に一枚ずつある「寛骨(かんこつ)」と、真ん中にひとつある「仙骨」、その仙骨に続く「尾骨」でできています。さらに寛骨は、部分によって「腸骨」「恥骨」「坐骨」の三つに呼び名が分かれます。

(骨盤前面図)
骨盤が開閉するとき、軸となる関節が「仙腸関節」。仙骨と腸骨をつなぐ仙腸関節を軸にして、骨盤は横に、そして縦にも開いたり閉じたりしています。

(股関節・仙腸関節前面図)
イラストby「アイリス・アイリスの作業現場」
そう言っておきながら何なのですが、仙腸関節は「動くか動かないか」で、主に医学界と手技療法界の間で、考え方が対立しています。
医学界では、仙腸関節は「不動関節(肘や膝の関節のように動くことなく、がっちり固まったまま骨盤のかたちを保っている関節)」であると、長い間考えられてきました。
一方、整体やカイロプラクティックの手技療法界では、経験的に最初から仙腸関節は動くものであるとして、技術を発展させてきた背景があります。
ただし動きといってもほんの数ミリ程度。また、解剖して調べた場合と、生きている人の場合とでは、仙腸関節の状態は異なります。
それらのことから、医学界と手技療法界、今でも説は分かれる部分もあります。しかし徐々に仙腸関節も動くとする考え方が、医学界にも広まりつつあるようです。
例えば、整形外科や理学療法の分野でも広く読まれている、関節生理学の文献(「カパンディ 関節の生理学」「新動きの解剖学」など)によると、仙骨が前に傾いた場合と後ろに傾いた場合の、それぞれの腸骨の動きについて、詳しく書かれています。
議論の行方はともかくとして、仙腸関節は動くとする考え方に基づき、手技療法界では、骨盤の触診(触ってみて、かたちを検査。スタティック・パルぺーションと呼ばれます)と動診(動かしてみて、動きにくい方向が縦なのか横なのかを検査。モーション・パルぺーションと呼ばれます)により、骨盤の歪みがどうなっているかを詳しく検査します。
特にカイロプラクティックの世界において、その技術は体系化されてきました。
日本もそうですが、法律上、資格がないとレントゲン撮影ができない国々では、骨盤や脊柱の歪みを、手技によって検査する方法が発達してきたのです。
それでは、仙腸関節を軸とした骨盤の開閉のしくみを見ていきましょう。
|